本記事の構成
本記事は以下の内容で構成されています。
・実際の設例
・本試験の概要と傾向
・得点のカギとなる論点
・各質問事項と検討のポイント
・実際の面接試験の想定応答集
実際の設例
それではまず、今回の設例を読んでいきましょう。
●設例●
Aさん(75歳)は、妻Bさん(72歳)と首都圏近郊のM市内の戸建て住宅で2人で暮らしている。Aさんは10年前に父親の相続で取得したM市内の甲土地上にある店舗を、父親の代から30年にわたり地元のスーパーに賃貸しているが、近隣に大型商業施設が進出したため、賃貸中のスーパーは閉店を余儀なくされ、賃貸借の解約の申出を受けた。
Aさん夫妻には長男Cさん(45歳。妻、15歳の子1人)、長女Dさん(43歳。夫、12歳の子1人)の2人の子がいる。長男Cさん家族と長女Dさん家族は、いずれも隣県の賃貸住宅に住んでおり、マイホームの取得を検討しているが、住宅価格が高騰し容易には購入の決断ができないでいる。Aさんは、建築費を負担することなく、甲土地を安定的に活用し、子どもたちに相続したいと思っていたところ、地元スーパー閉店の情報を得たデベロッパーのX社から、甲土地での一般定期借地権によるマンション開発の提案があった。
【X社の提案内容】
・X社が甲土地を一般定期借地契約により賃借し、店舗建物を取り壊したうえ、8階建て、延べ面
積2,100㎡、専有面積1,800㎡、25戸(一戸平均専有面積72㎡)のマンションを建築し、分譲す
る。
・権利金1,200万円、借地期間70年、毎月地代100万円、そのうち50%の70年分(4億2,000万
円)を前払地代とする(甲土地の固定資産税・都市計画税は年額約150万円と推定)。
・平均分譲単価104万円(専有面積1㎡当たり)、一戸平均7,500万円(前払地代を含む)
※購入者の平均負担額は毎月5万5,000円(地代2万円、解体準備金5,000円、管理費・修繕積立
金3万円)。毎月の地代とは別に、地代の70年分(1,680万円)を前払地代としてマンション購
入時の価格に含めて支払う。
AさんはX社の提案を前向きに検討しており、長男Cさんと長女Dさんも乗り気で、完成したマンションに住みたいとも言っている。Aさんは、相続対策と子どもたちへの援助も兼ねて、前払地代を使ってX社のマンションを2戸購入し、形式上、固定資産税・都市計画税程度の家賃で長男Cさん家族と長女Dさん家族を住まわせれば、相続時に有利かもしれないと考えている。また、前払地代の残りは、老後の生活費と子どもたちへの援助に使いたいと考えている。特に孫たちが今後高校・大学進学を控えていることもあり、教育費の援助をしたいと思っているが、最近ニュースで教育資金贈与の特例が廃止となったと聞き、どのように援助すれば税制上有利となるのか知りたいと思っている。このような状況のもと、Aさんは自身の計画について、FPであるあなたに相談することとした。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験(資産相談業務)2026年
本試験の概要と傾向
難易度・受験生目線の対策方法
一般定期借地権を活用した土地の有効活用と相続対策、子や孫への資金援助をテーマとした設例です。長年賃貸してきた店舗の退去を契機に、デベロッパーからマンション開発の提案を受けており、一般定期借地権の仕組みや前払地代の取扱いを理解しているかがポイントになります。
受験生としては、まず一般定期借地権の存続期間や契約方法、契約終了時の建物取壊し・土地返還といった基本的な特徴を整理しておくことが重要です。また、権利金や前払地代を受け取った場合の税務上の取扱いや、借地権設定後の土地の相続税評価についても確認しておきたいところです。
さらに、Aさんがマンションを購入して長男Cさん・長女Dさん家族に低額で貸す案については、相続税評価だけでなく、使用貸借や低額賃貸としての取扱い、貸家・貸家建付地の評価が適用できるかといった点まで考える必要があります。孫への教育費援助についても、教育資金贈与の特例に頼るのではなく、扶養義務者から必要な都度支払われる教育費の非課税扱いや暦年贈与など、代替手段を説明できるようにしておくと対応しやすい設例です。
本設例の関連テーマ
ここで、しっかりと基礎知識を付けておくことが重要でしょう。
講義内では、これらの論点についてしっかり解説しておりますので、ここの知識を定着させていたかどうかが、本試験での回答力となったと言えるでしょう。
FPキャンプ内でも、これらの論点に関してはしっかりと解説しております。
リンク
「FPキャンプ1級実技試験コース」を受講されている方は、上記の観点テーマからしっかり学んでおきましょう。
得点のカギとなる論点
PartⅠと異なり、PartⅡでは質問事項が記載されているため、これらについて設例読みの段階で、想定される質問を整理しておきましょう。
FPへの質問事項
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要
ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
①Aさんから直接聞いて確認する情報
②FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.権利金と前払地代の違いについて教えてください。また、前払地代として受け取った金銭は、所得税
および相続税について、どのように扱われますか。
3.AさんがX社のマンションを2戸購入し、長男Cさんと長女Dさんに固定資産税・都市計画税程度の
家賃で居住させ、Aさんの相続が開始した場合、当該住戸の家屋部分はどのように評価されますか。
4.①子どもたちにX社のマンションを取得させる方法として、どのような方法が考えられますか。
②教育資金の援助について、Aさんにどのようなアドバイスをしますか。
5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。
なお、PartⅡの最初および最後の質問は、いずれの《設例》においても共通して出題される固定質問です。これらのいわゆる「王道質問」への備え方や考え方については、以下の記事をご参照ください。
PartⅡ対策 固定質問3つへの考え方
各質問事項と検討のポイント
それでは各質問事項に対する提案のポイントと、知っておくべき知識について解説していきます。
なお実際の試験で問われた細かな論点や質問事項などは、この後の「面接試験の想定応答集」で紹介しておりますので、本章では省略します。
質問2 権利金と前払地代の違い、課税関係
提案のポイント
・契約時に授受する金銭ごとの返還義務と課税関係
解説
定期借地権の契約時に授受する金銭の課税関係について、整理しましょう。
代表的なものに、権利金と前払地代、また本件では問われていませんが敷金(保証金)があげられます。
敷金(保証金)とは、借地人が土地を明け渡すまでの借地人の債務を担保するという性質があります。そのため、契約終了時には借地人に返還しなければなりません。
権利金は、借地権設定の対価として借地人から支払われる金銭です。契約終了時に返還義務はありません。
前払地代とは、定期借地権を設定する際に、借地権者が地主に対して借地期間の地代の一部または全部を一括して支払う金銭をいいます。中途解約時には、未経過分の返還義務が生じます。
それぞれの課税関係をまとめると以下のようになります。

先ほど確認したように、権利金は返還義務がないので、債務控除の対象とならず、相続税の課税対象です。
ここで、注意して欲しいのは、前払地代は原則として、相続税の債務控除の対象とはならない点です。
前払地代は、将来受け取るべき地代を先に受け取るため、負債の性質を有しています。一見すると債務控除の対象となるようにも考えられます。
しかし、定期借地権契約は、中途解約を前提とした契約ではありません。一般的に前払地代は借地人に変換されず、契約が満了となることがほとんどです。債務として返還することが確実といえないのです。
そのため、前払地代の未経過分は債務控除の対象とはなりません。
質問3 マンション(家屋)の評価
提案のポイント
・固定資産税・都市計画税相当額の賃借料
解説
今回のポイントは長男Cさんと長女Dさんを固定資産税・都市計画税相当額の家賃で居住させている点です。家屋の相続税評価額についてが出題されることはレアケースとなっていますが、土地の評価額から発想を転換させれば対応できたはずです。
固定資産税・都市計画税相当額の賃借料
固定資産税相当額の賃借料を支払っている場合、使用貸借とみなされます。これは土地だけでなく、家屋についても同様に考えられます。
サトシ講師サトシ講師のワンポイント
固定資産税相当額の賃借料は「土地や家屋を使用することの対価」ではなく、「不動産から生じる費用」を負担しているにすぎません。対価を支払って使用しているわけではないので、使用貸借とみなされるわけです。
そのため、固定資産税相当額の賃借料の場合、一般的に土地であれば自用地価額で評価され、家屋であれば自用家屋として評価されます。
自用家屋の評価額は以下の算式で求めます。
質問4 子供たちにマンションを取得させる方法/教育資金の援助
提案のポイント
・直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
・扶養義務者からの生活費及び教育費の贈与の非課税
解説
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
子どもたちにマンションを取得させる手段として、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」の活用が考えられます。
2026年12月31日までの間に、自己の居住の用に供する一定の家屋の取得のための資金を、直系尊属から贈与により取得した場合には、省エネ等住宅は1,000万円まで、それ以外の住宅は500万円までが非課税となります。
本制度は、暦年課税制度の基礎控除額110万円や相続時精算課税制度の基礎控除額110万円・特別控除額2,500万円と併用できます。
扶養義務者からの生活費及び教育費の贈与の非課税
2026年3月31日までは、30歳未満の者が、「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」の適用を受けることで、1,500万円までの贈与について贈与税が非課税となっていました。しかしながら、本制度は廃止となりました。
そのため、教育資金を一括で贈与する場合には贈与税が課税される可能性があります。
対処法として考えられるのは、資金を一括で贈与するのではなく、毎年必要な額だけ資金を孫に贈与する方法です。相続税法第21条の3第1項第2号では扶養義務者間の通常必要な教育費の贈与は非課税となります。毎年、孫の学費を祖父が支払う程度の贈与であれば、贈与税は課税されません。



サトシ講師のワンポイント
相続税法第21条の3第1項第2号では、贈与税に課税されない財産について「扶養義務者相互間において生活費または教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち、通常必要と認められるもの 」と定めています。
1年間の学費であれば、『通常必要と認められるもの』として贈与税が非課税になります。
実際の面接試験の想定応答集
それでは、上記の質問事項と知識の整理を踏まえたうえで、実際に試験会場で面接官から行われた質問を再現した、想定応答集をご覧ください。
想定応答集の注意点
- 本想定応答集は、金財実施のFP1級実技試験を実際に受験した「FPキャンプ1級実技コース」受講生のアンケ―トに基づき、FPキャンプ講師陣が実際の面接試験のやりとりを再現したものです。
- 「FPキャンプ1級実技コース」は、1級実技試験受験生の36.0%が利用し、利用者数は各試験ごとに180名以上となっています。本想定応答集では、大量のアンケートデータを集計し、試験機関が想定されていると思われる王道の質問の流れをご紹介しています。
- 記事の都合上、本想定応答集は、実際に行われた質問を一言一句再現したものではありません。面接官や本番試験の解答の流れによって、異なる質問が行われているケースもございます。
- 本想定応答集の回答は、FPキャンプ講師陣が考える模範解答を掲載しております。試験機関側が模範解答としたものではありません。また、この通りに回答しなければならない得点が得られないというものでもありません。
質問1 Aさんから直接聞いて確認する情報とFPが調べて確認する情報
(受検生)と申します。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんから直接聞いて確認する情報として考えられる項目は何がありますか?
以降の内容につきましては、FPキャンプ1級きんざい実技コースをご利用の方のみご覧いただけます。
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