本記事の構成
本記事は以下の内容で構成されています。
・実際の設例
・本試験の概要と傾向
・得点のカギとなる論点
・各質問事項と検討のポイント
・実際の面接試験の想定応答集
実際の設例
それではまず、今回の設例を読んでいきましょう。
●設例●
会社員のAさん(64歳)は、妻Bさん(62歳)と自宅マンションで暮らし、一人息子は結婚して他所で暮らしている。Aさんは、2年前に亡くなった父Cさんから三大都市圏のS市内にある甲土地を相続で取得した。甲土地は、15年前に父Cさんが親戚のDさん(75歳、工務店を経営)から紹介を受けた大手コンビニチェーンのX社に事業用定期借地権を設定して賃貸しており、現在、甲土地上にはX社が建設したコンビニ店舗(鉄骨造平屋、延べ面積180㎡)が建っている。Aさんは勤務している会社を来年退職予定であるが、甲土地からの地代収入と年金収入があれば退職後も安泰と思っており、リタイア後の生活を楽しみにしていた。
【甲土地と借地契約の概要】
・甲土地 :地積540㎡、私鉄S駅から徒歩10分、固定資産税等年間130万円、準幹線道路に面する
・借地契約 :事業用定期借地契約、期間20年(2011年8月から2031年7月まで)、月額地代65万
円、敷金10カ月、期間中の中途解約は6カ月前予告で可
ところが、最近AさんがX社の担当者と面談した際、「競合コンビニ店舗が近隣に増加したため、これ以上の運営は難しいと判断した。撤退はすでに内々の話が完了しており、2~3カ月後に正式に閉店と借地契約の解約をお伝えする。その折は、約定に従って6カ月以内に建物をX社で収去して更地で返還する」と説明を受けた。甲土地からの地代収入を老後の生活費として当てにしていたAさんにとって、X社の撤退は予想外のことであった。困ったAさんは、X社を紹介してくれたDさんに相談したところ、Dさんは「最近S県内で店舗を増やしている野菜専門販売業者のY社社長とは昔から懇意にしている。一度Y社に出店を勧めてみる」と言ってくれ、その後、Dさんを通じてY社から下記の提案があった。
【Y社からの提案内容】
建物は現在のまま利用できるので、内部の造作を撤去(スケルトン状態にする)してくれれば建物を借りたい。長く借りるつもりであるが、契約条件は月額賃料70万円(消費税込)、敷金6カ月、契約期間3年間(期間更新あり)の普通建物賃貸借契約としたい。
Aさんとしては、提案を受けた賃料については、現在とほぼ同程度の水準であり、長期間Y社が借りてくれればありがたいと思っているが、今後建物が古くなっていくことから修理・維持管理などの面倒なことは行いたくないと考えている。また、X社の担当者からは面談時に現在のコンビニ店舗は近いうちに収去すると言われていることから、X社とどのように交渉をすればよいのかわからない。
このような状況のもと、AさんからFPであるあなたに相談があった。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験(資産相談業務)2026年
本試験の概要と傾向
難易度・受験生目線の対策方法
事業用定期借地権による土地賃貸から、既存建物を活用した普通建物賃貸借への切替えを検討する設例です。X社の撤退によって老後の地代収入が失われる可能性が生じるなか、Y社から建物賃貸の提案を受けており、土地賃貸と建物賃貸の違いを整理しながら判断することが求められます。
受験生としては、まず事業用定期借地権の中途解約や契約終了時の建物収去・更地返還といった基本的な取扱いを押さえておくことが重要です。そのうえで、Y社に既存建物を賃貸するためには、X社による建物収去を止める必要があるため、X社から建物を譲り受けるなどの交渉方法が重要な論点となります。
また、Y社との契約は普通建物賃貸借契約であるため、契約更新や貸主からの解約・更新拒絶に正当事由が必要となる点など、定期借地権との違いを整理しておきたいところです。さらに、Aさんは建物の修理・維持管理を負担したくないと考えているため、修繕義務や費用負担について契約上どのように定めるかも重要です。Aさんの老後の安定収入を確保するという意向を踏まえ、収益性だけでなく、契約の安定性や管理負担まで含めて比較する視点が求められる設例です。
本設例の関連テーマ
「FPキャンプ1級実技試験コース」を受講されている方は、下記の論点について動画を通してしっかり学んでおきましょう。
得点のカギとなる論点
PartⅠと異なり、PartⅡでは質問事項が記載されているため、これらについて設例読みの段階で、想定される質問を整理しておきましょう。
(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要
ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
①Aさんから直接聞いて確認する情報
②FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.Y社に甲土地上の建物を借りてもらうことを前提とした場合、X社とどのような交渉をすればよいで
すか。
3.X社に土地を賃貸する場合とY社に建物を賃貸する場合とでは、契約内容や賃料に係る税金につい
て、どのような違いがありますか。
4.Aさんの意向を踏まえ、Y社の提案について、どのようなアドバイスをしますか。また、Y社に建物
賃貸借以外の方法で利用してもらう場合、どのような方法が考えられますか。
5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。
なお、PartⅡの最初および最後の質問は、いずれの《設例》においても共通して出題される固定質問です。これらのいわゆる「王道質問」への備え方や考え方については、以下の記事をご参照ください。
PartⅡ対策 固定質問3つへの考え方
各質問事項と検討のポイント
それでは各質問事項に対する提案のポイントと、知っておくべき知識について解説していきます。
なお実際の試験で問われた細かな論点や質問事項などは、この後の「面接試験の想定応答集」で紹介しておりますので、本章では省略します。
質問2 Y社が甲土地上の建物を借りる場合のX社との交渉事項
提案のポイント
・Y社が既存建物の利用を希望しているため、X社に建物を解体せずに引き渡してもらうよう交渉する
・X社は建物の解体が不要となり、解体費用を負担せずに済む
・解体費用相当額を考慮して、建物の譲渡価格の引き下げを交渉する
解説
現在、甲土地にはX社との事業用定期借地権が設定されており、契約終了時には、X社が所有する建物を収去して更地で返還することになっています。一方、Y社は現在の建物をそのまま利用することを希望しているため、AさんはX社に対して、建物を解体せずに残した状態で引き渡してもらえないか交渉することが考えられます。
建物を残すことになれば、X社は本来負担する予定だった建物の解体費用を負担する必要がなくなります。そのため、AさんがX社から建物を譲り受ける場合には、X社が負担せずに済む解体費用相当額を考慮して、建物の譲渡価格を引き下げてもらうよう交渉する余地があります。
質問3 土地の賃貸と建物の賃貸における契約内容や課税関係の違い
提案のポイント
・X社への土地の賃貸、Y社への建物の賃貸は、いずれも原則として不動産所得となる
・土地の貸付けは消費税の非課税取引、事業用建物の貸付けは課税取引となる
・Y社に建物を賃貸する場合、Aさんが建物の維持・管理を行う必要がある
解説
X社との契約では、Aさんは甲土地に事業用定期借地権を設定して土地を賃貸しています。一方、Y社の提案を受け入れる場合には、Aさんが建物を取得したうえで、Y社に事業用建物を賃貸することになります。いずれの賃貸収入も原則として不動産所得となりますが、消費税の取扱いが異なります。
本設例では、X社から受け取る地代は土地の貸付けであるため消費税は非課税ですが、Y社に店舗として建物を貸す場合の賃料は、事業用建物の貸付けとなるため消費税の課税対象となります。
また、建物賃貸ではAさんが建物の所有者・賃貸人となるため、建物の維持・管理についても負担が生じます。Aさんは修理や維持管理などの手間をかけたくないと考えているため、この点もY社の提案を検討するうえで重要になります。
インボイス制度との関係
Aさんが免税事業者でインボイス登録をしていない場合、Y社はAさんに支払う賃料について、原則として仕入税額控除の適用が制限されます。
質問4 Aの意向を踏まえたY社の提案に対するアドバイス
提案のポイント
・Aさんの意向を踏まえ、Y社との事業用定期借地権による契約を提案する
解説
Y社は、既存建物を月額70万円(税込)で借り、3年間の普通建物賃貸借契約とすることを提案しています。一方、Aさんは「建物の修理・維持管理などの面倒なことは行いたくない」と考えているため、建物を所有してY社に賃貸する方法は、Aさんの意向に合っているとはいえません。
また、普通借家契約では、貸主から契約の更新拒絶や解約の請求をする場合には正当事由が必要となるほか、借主から賃料減額請求を受ける可能性もあります。
こうした契約上のリスクを抑える方法として定期借家契約も考えられますが、Aさんが建物の所有者となる以上、建物の維持・管理に関する負担そのものはなくなりません。
そのため、Aさんの「建物を管理したくない」という意向を重視するのであれば、Y社に建物を所有してもらい、Aさんは土地を貸す事業用定期借地権方式による契約ができないか交渉することが考えられます。
実際の面接試験の想定応答集
それでは、上記の質問事項と知識の整理を踏まえたうえで、実際に試験会場で面接官から行われた質問を再現した、想定応答集をご覧ください。
想定応答集の注意点
- 本想定応答集は、金財実施のFP1級実技試験を実際に受験した「FPキャンプ1級実技コース」受講生のアンケ―トに基づき、FPキャンプ講師陣が実際の面接試験のやりとりを再現したものです。
- 「FPキャンプ1級実技コース」は、1級実技試験受験生の36.0%が利用し、利用者数は各試験ごとに180名以上となっています。本想定応答集では、大量のアンケートデータを集計し、試験機関が想定されていると思われる王道の質問の流れをご紹介しています。
- 記事の都合上、本想定応答集は、実際に行われた質問を一言一句再現したものではありません。面接官や本番試験の解答の流れによって、異なる質問が行われているケースもございます。
- 本想定応答集の回答は、FPキャンプ講師陣が考える模範解答を掲載しております。試験機関側が模範解答としたものではありません。また、この通りに回答しなければならない得点が得られないというものでもありません。
質問1
(受検生)と申します。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんから直接聞いて確認する情報として考えられる項目は何がありますか?
以降の内容につきましては、FPキャンプ1級きんざい実技コースをご利用の方のみご覧いただけます。
FPキャンプをご利用中の方は、毎朝配信されるメールマガジンに記載されているパスワードを入力してください。
FPキャンプをご利用でない方は下記画像をタップしてコースをご利用ください。




