本記事の構成
本記事は以下の内容で構成されています。
・実際の設例
・本試験の概要と傾向
・得点のカギとなる論点
・各質問事項と検討のポイント
・実際の面接試験の想定応答集
実際の設例
それではまず、今回の設例を読んでいきましょう。
●設例●
Aさん(70歳)は、5年前に大手メーカーを退職し、三大都市圏近郊のⅩ市内にある自宅(甲土地・甲建物)で妻Bさん(67歳)と暮らしている。1人娘の長女Cさん(37歳)は会社員で、同市内の賃貸マンションで夫(40歳)と2人の子(6歳と4歳)と暮らしている。
先日、長女Cさんから、「今の賃貸マンションが手狭になり、また、保育園などの送り迎えも大変になってきたので、二世帯住宅を建てて一緒に暮らせないか。お父さんたちが賛成なら夫もそうしたいと言っている」と相談があった。
ちょうど、Aさんは自宅(相続で取得、築50年)の大規模修繕か建替えを考えていたこともあり、長女Cさんの提案を受け入れることにした。妻Bさんも娘家族と一緒に暮らせることをうれしく思っている。親子世帯で話し合った結果、建設資金はAさんと長女Cさん夫婦が半分ずつ拠出し、完全分離型の二世帯住宅にしたいとの結論に達したが、ハウスメーカーの説明では、甲土地の広さでは希望する間取りは難しいとのことである。
Aさんは、自宅がある甲土地のほかに乙土地を所有している。乙土地は、父親の代から普通借地としてDさん(75歳)に賃貸しており、Dさんは、借地上に所有する乙建物(店舗兼用住宅)で喫茶店を経営しながら、妻と2人で暮らしている。Aさんは、Dさんとは家族ぐるみの付き合いで、時々喫茶店に顔を出している。先日、Aさんが喫茶店を訪れたとき、「そろそろ年だし店は閉めようと思う。Aさんの承諾が得られれば、借地を売ったお金で住み慣れたこの近辺に土地を買い、夫婦2人で住むこじんまりした家屋を建てることを考えている」とDさんから言われた。
【Aさんと長女Cさん夫婦の住宅計画】
完全分離型の二世帯住宅(1階に親世帯の玄関と子世帯の玄関を別々に配置)
1階 110㎡:親世帯2LDK ※駐車スペース普通車2台分
2階 95㎡:子世帯3LDK
予算6,000万円(Aさん:自己資金3,000万円、Cさん夫婦:自己資金+ローン3,000万円)
【Dさんから聞いた住宅計画】
1階 66㎡:2LDK ※駐車スペース普通車1台分
予算2,200万円(自己資金)土地購入費は、借地の売却資金を充当する予定
※現在の借地上の乙建物は、1階100㎡(店舗50㎡、住居50㎡)2階50㎡(住居)、築60年
※借地の開始時に権利金が支払われているかは不明。これまでに2回更新されているが、
更新料の支払は行われていない。当該地は借地権の取引慣行のある地域である。なお、第三者に
建替え前提で借地権を売却する場合、地主に借地権の譲渡承諾料および建替え承諾料等を支払う
必要があり、これらを合計すると更地価格の10%程度となる。
Aさんは、Dさんから借地権を買い取れば乙土地に二世帯住宅を建てられるのではないかと思い付いた。しかし、買取資金は手元になく、甲土地を売って費用を捻出しなければならないのか、頭を悩ませている。このような状況で、FPであるあなたに相談があった。
(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。
出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験(資産相談業務)
本試験の概要と傾向
本設例の概要
Aさんは、三大都市圏近郊の自宅で妻Bさんと暮らしているが、長女Cさんから二世帯住宅を建てて同居したいとの相談を受けた。Aさん自身も築50年の自宅の建替えを検討していたことから、家族で話し合った結果、建設資金をAさんと長女Cさん夫婦で半分ずつ負担し、完全分離型の二世帯住宅を建築する方向で合意した。しかし、ハウスメーカーからは現在の甲土地の広さでは希望する間取りの住宅を建てることが難しいと説明を受けている。
一方で、Aさんが所有する乙土地は、父親の代からDさんに普通借地として貸しており、Dさんは借地上の建物で喫茶店を営みながら生活している。Dさんは高齢となったことから店を閉め、借地権を売却して近隣に小規模な住宅を建てたいと考えていることをAさんに伝えている。Aさんは、この借地権を買い取ることで乙土地を活用し、二世帯住宅を建てることができるのではないかと考えているが、そのための資金が手元にないため、甲土地を売却する必要があるのかどうかなど、住宅計画と借地権の取扱いについて悩んでいる状況である。
難易度・受験生目線の対策方法
二世帯住宅の建築計画と借地権の取扱いをテーマとした設例です。自宅の建替えにあたり、隣接地の借地権をどのように扱うかという不動産実務に関する論点が中心となっており、借地権の譲渡や地主の承諾料など、借地借家法に関連する基本知識を整理しておく必要があります。
受験対策としては、普通借地権の譲渡や建替えに際して地主の承諾が必要となることや、その際に譲渡承諾料・建替承諾料が発生する点など、借地権取引の基本的な仕組みを理解しておくことが重要です。また、二世帯住宅建築に伴う資金負担の方法や、親子間の資金援助に関する税務上の取扱いなどについても整理しておくと対応しやすい設例といえるでしょう。
本設例の関連テーマ
不動産の譲渡およびその特例
土地の交換
ここで、しっかりと基礎知識を付けておくことが重要でしょう。
講義内では、これらの論点についてしっかり解説しておりますので、ここの知識を定着させていたかどうかが、本試験での回答力となったと言えるでしょう。
FPキャンプ内でも、本論点に関してはしっかりと解説しております。
不動産の譲渡① 居住用財産の譲渡の特例
不動産の譲渡③ 土地の交換の概要と特例
「FPキャンプ1級実技試験コース」を受講されている方は、上記の観点テーマからしっかり学んでおきましょう。
得点のカギとなる論点
PartⅠと異なり、PartⅡでは質問事項が記載されているため、これらについて設例読みの段階で、想定される質問を整理しておきましょう。
(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情
報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
①Aさんから直接聞いて確認する情報
②FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.Dさんが乙建物と借地権を売却する場合、譲渡所得の課税関係はどうなりますか。
3.本件の解決方法として、あなたはAさんにどのようなアドバイスをしますか。
4.Aさんと長女Cさん夫婦が計画どおり完全分離型の二世帯住宅を建てた場合、その登記をするにあた
って、将来の相続税の課税上、どのような点に注意すべきですか。
5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。
なお、PartⅡの最初および最後の質問は、いずれの《設例》においても共通して出題される固定質問です。これらのいわゆる「王道質問」への備え方や考え方については、以下の記事をご参照ください。
PartⅡ対策 固定質問3つへの考え方
各質問事項と検討のポイント
それでは各質問事項に対する提案のポイントと、知っておくべき知識について解説していきます。
なお実際の試験で問われた細かな論点や質問事項などは、この後の「面接試験の想定応答集」で紹介しておりますので、本章では省略します。
質問2 Dさんが乙建物と借地権を売却する場合の譲渡所得の課税関係
提案のポイント
・譲渡に係る税金と特例
解説
土地や建物などを譲渡した場合は、譲渡所得が課されます。
譲渡所得の計算式における税率は、取得日から譲渡年の1月1日における所有期間によって異なり、申告分離課税となります。
譲渡所得の計算上活用できる特例として次の2つをおさえておきましょう。
①居住用財産の3,000万円の特別控除
1つ目の特例は、居住用財産の3,000万円の特別控除です。
居住用財産の3,000万円の特別控除とは、居住用財産を売った場合に、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000 万円まで控除ができる特例です。主な要件は以下の通りです。
本件において、譲渡の対象となる乙土地では、Dさんが所有する店舗兼用住宅の乙建物が存在しています。この場合、Dさんは、乙建物全体のうち住宅に該当する部分のみ居住用財産の3,000万円の特別控除の適用を受けることができます。
②軽減税率の特例
2つめの特例は、軽減税率の特例です。
軽減税率の特例とは、居住用財産を売った場合に、長期譲渡所得の税額に軽減税率を適用できる特例です。主な要件として、譲渡資産の所有期間が10年を超えている必要があります。
要件を満たした場合、課税譲渡所得金額のうち6,000万円以下の部分について、14.21%の軽減税率を適用することができます。
本件の場合、乙建物は築60年かつ、乙土地はAさんの父親の代から賃貸していることから、適用可能であることがわかります。
質問3 解決策としてどのようにアドバイスするか
提案のポイント
・固定資産の交換の特例は、同種の固定資産であれば適用可能
解説
固定資産の交換の特例の概要
固定資産の交換の特例とは、個人が固定資産を交換した場合、譲渡がなかったものとみなされることにより、譲渡所得の課税が繰り延べられる制度です。本特例の適用要件は次の通りです。
本件の場合
本件において、Aさんが住宅計画をかなえるためには、Dさんが使用している乙土地の借地権を買い取る必要がありますが、設例には「買取資金は手元になく、」と記載があります。
一方で、固定資産の交換の特例では、所有資産との交換で土地を取得するため、資金負担を抑えられる点が大きなメリットです。さらに、Dさんも住み慣れた近辺で暮らしていきたいと考えていることからも、Aさんへの提案内容として、固定資産の交換の特例の活用が適切であると判断します。
また、この場合、Aさんが持つ「甲土地の所有権」と、Dさんが持つ「乙土地の借地権」を交換することになります。この際、所有権と借地権は税務上同種の固定資産であると取り扱われるため、本特例の適用が可能です。
質問4 二世帯住宅を建てた場合の将来の相続税の課税上の注意点
提案のポイント
・相続を想定した住宅の建築
解説
二世帯住宅を建てる場合に、検討しなくてはならないことは、将来の相続税対策です。
本件において、将来相続が発生した場合、特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受けられる可能性があります。ただし、二世帯住宅の場合は、区分所有登記の有無によって適用の可否が異なります。
区分所有登記を行っている場合、同居とは認められず、小規模宅地等の特例の適用を受けられません。
一方で、共有登記などの区分所有登記を行っていない場合、構造上・利用上の独立性がある住宅(完全分離型等)であっても、同居と認められ、特例の適用が可能になります。
ここで注意すべきこととして、資金を出した子がいるにもかかわらず、親の単独名義で登記すると、子から親への「贈与」とみなされ、多額の贈与税が課税されるリスク(みなし贈与)があります。
そのため、贈与税の課税を避けるために、出資比率に応じた共有持分にすることが必要です。
実際の面接試験の想定応答集
それでは、上記の質問事項と知識の整理を踏まえたうえで、実際に試験会場で面接官から行われた質問を再現した、想定応答集をご覧ください。
想定応答集の注意点
- 本想定応答集は、金財実施のFP1級実技試験を実際に受験した「FPキャンプ1級実技コース」受講生のアンケ―トに基づき、FPキャンプ講師陣が実際の面接試験のやりとりを再現したものです。
- 「FPキャンプ1級実技コース」は、1級実技試験受験生の23.8%が利用し、利用者数は各試験ごとに180名以上となっています。本想定応答集では、大量のアンケートデータを集計し、試験機関が想定されていると思われる王道の質問の流れをご紹介しています。
- 記事の都合上、本想定応答集は、実際に行われた質問を一言一句再現したものではありません。面接官や本番試験の解答の流れによって、異なる質問が行われているケースもございます。
- 本想定応答集の回答は、FPキャンプ講師陣が考える模範解答を掲載しております。試験機関側が模範解答としたものではありません。また、この通りに回答しなければならない得点が得られないというものでもありません。
質問1 Aさんから直接聞いて確認する情報とFPであるあなたが調べて確
認する情報
(受検生)と申します。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんから直接聞いて確認する情報として考えられる項目は何がありますか?
以降の内容につきましては、FPキャンプ1級きんざい実技コースをご利用の方のみご覧いただけます。
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