本記事の構成
本記事は以下の内容で構成されています。
・実際の設例
・本試験の概要と傾向
・得点のカギとなる論点
・各質問事項と検討のポイント
・実際の面接試験の想定応答集
実際の設例
それではまず、今回の設例を読んでいきましょう。
●設例●
Aさん(62歳)は、三大都市圏近郊のK市で建設業を営んでおり、同市にある自宅(甲土地および甲建物、10年前に母親の相続で取得)で妻Bさん(60歳)と長男(32歳)夫妻および孫2人の6人で暮らしている。
先日、甲土地の北側に隣接する乙土地および乙建物の所有者で住人であるCさん(84歳)から、「生活費を工面するために住まいを処分したいと思っているが、買ってもらえないだろうか。価格は5,000万円でお願いしたい」という申出を受けた。なお、その際Cさんが持参した登記簿によれば、乙土地上にはかなり前に設定された4,000万円の抵当権の設定があった。売却後、Cさんは近くにアパートを借りて住むとのことである。
Cさんは、母親と同居していたが、20年前に母親が亡くなってからはこの場所で1人暮らしをしており、家族はいない。Cさんと面識のある近隣の住民によれば、「Cさんの父親は母親が亡くなる前に他界しており、都内に住んでいた唯一の兄弟である兄Dさんも5年前に亡くなっている。兄Dさんには妻と2人の息子がいると聞いている。またCさんは若い頃一度結婚していたが、その後に離婚して再婚はしていないと言っていた」とのことである。
Aさんは、乙土地が買えれば、甲土地と一体で、事務所の新設や二世帯住宅の建築も可能となるので、ぜひ購入したいと考えている。経営する会社の業績は順調であり、個人での購入資金に問題はない。
ただ、1つ心配なことがある。Cさんが認知症を患っているのではないかという噂があることである。最近、Cさんと話したという近隣の住民によれば、Cさんは同じものが大量に配送されてきて困ったという話をしていることや、同じ話を何回も繰り返していたとのことで、夜中に独り歩き(徘徊)しているところを何度か見たという人もいるようである。また、希望価格が相場より安いことも気になっている。
Cさんは社交的な性格ではなく、これまでAさんとも挨拶を交わす程度で深い交流はない。Aさんは、自宅を買い取ってほしいという話をしにきたときにCさんと対面しており、その際、会話自体は比較的問題なくできたものの、話し方や既に亡くなっていると聞いている母親に言われて相談に来たなどという発言に若干の違和感を覚えた。
このような状況で、Cさんと取引するにあたって不安を感じたAさんは、FPであるあなたのもとに相談に来た。
(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。


出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験(資産相談業務)
本試験の概要と傾向
本設例の概要
AさんはK市で建設業を営み、妻や長男家族と自宅で同居している。ある日、自宅の北側に隣接する乙土地および乙建物の所有者であるCさんから、生活費を確保するため自宅を5,000万円で売却したいとの申出を受けた。乙土地を取得できれば、Aさんは現在の甲土地と合わせて事務所の新設や二世帯住宅の建築など、土地の有効活用が可能になるため、購入を前向きに検討している。
しかし、乙土地には過去に設定された抵当権が残っていることや、Cさんが高齢で一人暮らしをしていることに加え、近隣住民から認知症の可能性を指摘する声もあり、Aさんは契約の有効性や将来のトラブルを懸念している。また、Cさんの希望する売却価格が相場よりも低いことや、本人の言動に違和感を覚える場面もあったことから、安心して取引を進めることができるのか不安を感じており、どのような点に注意して売買を進めるべきか相談している。
難易度・受験生目線の対策方法
隣接地の不動産売買をめぐる法的リスクをテーマとした設例です。特に、高齢者との不動産取引において問題となる意思能力の有無や、抵当権が設定された不動産の売買に関する留意点など、不動産取引の実務に近い論点が中心となっています。
受験対策としては、売買契約における意思能力の確認や成年後見制度の基本的な仕組み、抵当権が設定されている不動産を売買する際の手続き(抹消条件付き決済など)の流れを整理しておくことが重要です。また、売主の相続関係や将来の権利関係に問題が生じる可能性についても想定し、トラブルを未然に防ぐための確認事項や対応策を説明できるようにしておくとよいでしょう。
得点のカギとなる論点
PartⅠと異なり、PartⅡでは質問事項が記載されているため、これらについて設例読みの段階で、想定される質問を整理しておきましょう。
(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情
報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
①Aさんから直接聞いて確認する情報
②FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.乙土地の購入の話を進めるにあたって、Aさんにどのようなアドバイスをしますか。
3.①Cさんと契約後、仮にCさんが契約時すでに重度の認知症と診断されていた場合、売買契約はどう
なりますか。
②Cさんが仮に重度の認知症と診断されていた場合、Aさんが乙土地を購入するにはどのような方法
がありますか。
4.Aさんが乙土地を購入するメリットとして、どのようなことが考えられますか。
5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。
なお、PartⅡの最初および最後の質問は、いずれの《設例》においても共通して出題される固定質問です。これらのいわゆる「王道質問」への備え方や考え方については、以下の記事をご参照ください。
PartⅡ対策 固定質問3つへの考え方
各質問事項と検討のポイント
それでは各質問事項に対する提案のポイントと、知っておくべき知識について解説していきます。
なお実際の試験で問われた細かな論点や質問事項などは、この後の「面接試験の想定応答集」で紹介しておりますので、本章では省略します。
質問2 乙土地の購入に関してAさんへのアドバイス内容
提案のポイント
・乙土地の権利関係を確認し、抵当権の抹消状況を確認すること
・Cさんの認知症の程度や意思能力について確認すること
解説
Aさんは、乙土地を取得することで事務所新設や二世帯住宅建築などの活用を考えています。しかし今回の設例では、通常の不動産売買とは異なり、「抵当権」と「認知症の可能性」という2つの重要なリスクがあります。
抵当権の確認
設例では、乙土地に4,000万円の抵当権設定が残っているとの記載があります。抵当権が残ったままでは、将来金融機関が担保権を実行する可能性もあるため、売買前に現在の状況を確認する必要があります。
Cさんの認知症・意思能力の確認
もう一つ重要なのが、Cさんの認知症リスクです。設例では、「同じ話を繰り返す」「大量購入をしている」といった記載があり、判断能力低下の可能性が示唆されています。不動産売買契約では、契約時点で意思能力がなければ契約自体が無効になる可能性があります。そのため、契約前には家族状況や支援者の有無なども確認し、必要に応じて成年後見制度の利用も視野に入れる必要があります。
質問3 Cさんが認知症であった場合の売買契約について
提案のポイント
・意思能力がない場合は成年後見制度を利用する
・成年被後見人の居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要
解説
不動産売買契約では、売主・買主双方に契約内容を理解し判断できる能力、つまり意思能力が必要です。認知症と診断されている場合でも、直ちに契約が無効になるわけではありません。重要なのは、「認知症かどうか」ではなく、契約時点で意思能力を有しているかどうかです。重度の認知症などにより意思能力を欠く状態で契約を行った場合、その契約は無効となります。そのため、判断能力の低下が見られる場合には、成年後見制度の利用を検討します。
成年後見制度には、次の2種類があります。
Cさんに重度の認知症があった場合、本人が事前に任意後見契約を締結していない限り、利用する制度は法定後見制度となります。さらに、乙土地はCさんが居住している不動産であるため、成年後見人が選任されたとしても自由に売却することはできません。成年被後見人の居住用不動産の売却をする場合は、家庭裁判所の許可が必要となります。
質問4 Aさんが乙土地を購入するメリット
提案のポイント
・甲土地と乙土地の一体利用による建蔽率・容積率の緩和
・地積規模の大きな宅地の適用による相続税評価額の引き下げ
解説
建蔽率・容積率の緩和
甲土地と乙土地を一体利用することで、建蔽率と容積率が緩和され、土地の利用価値を高めることができます。
現状の甲土地は前面道路幅員4mのため、
4(m)× 4/10 =160%
となり、指定容積率200%より低い160%が適用されています。
一方、甲乙一体利用を行うことで、幅員8m道路に接することになり、
8(m)×4/10 =320%
となります。この場合、指定容積率200%の方が低くなるため、適用容積率は200%となります。
地積規模の大きな宅地の適用
一定規模以上の宅地については、「地積規模の大きな宅地」の適用を受けることができ、規模格差補正率を用いて土地評価額を引き下げることが可能です。本設例では、甲乙土地を一体利用することで土地面積が拡大するため、この制度の対象となる可能性があります。
実際の面接試験の想定応答集
それでは、上記の質問事項と知識の整理を踏まえたうえで、実際に試験会場で面接官から行われた質問を再現した、想定応答集をご覧ください。
想定応答集の注意点
- 本想定応答集は、金財実施のFP1級実技試験を実際に受験した「FPキャンプ1級実技コース」受講生のアンケ―トに基づき、FPキャンプ講師陣が実際の面接試験のやりとりを再現したものです。
- 「FPキャンプ1級実技コース」は、1級実技試験受験生の23.8%が利用し、利用者数は各試験ごとに180名以上となっています。本想定応答集では、大量のアンケートデータを集計し、試験機関が想定されていると思われる王道の質問の流れをご紹介しています。
- 記事の都合上、本想定応答集は、実際に行われた質問を一言一句再現したものではありません。面接官や本番試験の解答の流れによって、異なる質問が行われているケースもございます。
- 本想定応答集の回答は、FPキャンプ講師陣が考える模範解答を掲載しております。試験機関側が模範解答としたものではありません。また、この通りに回答しなければならない得点が得られないというものでもありません。
質問1 Aさんから直接聞いて確認する情報とFPであるあなたが調べて確
認する情報
(受検生)と申します。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんから直接聞いて確認する情報として考えられる項目は何がありますか?
以降の内容につきましては、FPキャンプ1級きんざい実技コースをご利用の方のみご覧いただけます。
FPキャンプをご利用中の方は、毎朝配信されるメールマガジンに記載されているパスワードを入力してください。
FPキャンプをご利用でない方は下記画像をタップしてコースをご利用ください。




