本記事の構成
本記事は以下の内容で構成されています。
・実際の設例
・本試験の概要と傾向
・得点のカギとなる論点
・各質問事項と検討のポイント
・実際の面接試験の想定応答集
実際の設例
それではまず、今回の設例を読んでいきましょう。
●設例●
都市圏で医療用機械器具製造業を営むX株式会社(非上場会社)は、Aさん(73歳)が40年前に設立した研究開発型の企業である。医療現場の声を迅速に反映させる研究開発力を強みとして、ニッチな領域で高収益体制を築いている。X社は事業の性質上、研究開発や生産に伴う継続的な投資が必要となり、今期も5,000万円の生産性向上設備の導入を計画している。購入先の設備メーカーからは、即時償却または税額控除が可能な設備投資に該当すると聞いている。
【事業承継について】
Aさんの長男Cさん(47歳)は、大手精密機器メーカーで生産管理業務を経験した後、Ⅹ社に移り、現在は専務取締役として研究開発と生産部門を率いている。製品の豊富な知識と誠実な顧客対応で、得意先から大きな信頼を得ており、社内外で後継者として認められている。また、二男Eさん(42歳)は、総合商社で医療ビジネスに従事している。
Aさんは、かねがね二男Eさんの営業力とビジネスセンスを高く評価しており、兄弟が力を合わせてX社を発展させてくれることが親としてもこの上ない喜びであると考えてきた。しかし、取引銀行から紹介を受けた事業承継コンサルタントや同業者仲間から、兄弟での事業承継は、将来的に経営方針の相違等から失敗するおそれがあるとも聞いており、X社株式の承継に踏み切れないでいた。ただ、いよいよ自身も高齢になり、事業承継税制(特例措置)の期限も迫る中、そろそろ決断をしなければならないと自覚している。幸い、長男Cさんと二男Eさんの関係は良好であり、2人ともAさんの想いを全面的に受け入れている。また、二男Eさんは将来的な事業承継に備えて、総合商社を退職する決意を固めている。
【資産承継等について】
Aさんの長女Dさん(45歳)は、公務員の夫と子2人の4人で地方都市にある戸建て住宅に暮らしている。地元に戻る予定はないものの、お盆や年末年始には孫を連れて帰省しており、Aさんも毎回楽しみにしている。来年は孫が高校・大学に入学する予定であり、Aさんは、祖父として学費の支援をしてあげたいと思っている。
【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.現預金 : 1億円(役員退職金は考慮していない)
2.X社株式 : 4億8,000万円
3.自宅
①土地(200㎡) : 5,000万円
②建物 : 2,000万円
4.Ⅹ社工場土地(500㎡) : 1億6,000万円(無償返還方式、通常の地代で賃貸)
5.月極駐車場(300㎡) : 9,000万円(コインパーキング設備付き)
合計 : 9億円
※Aさんの相続に係る相続税額は、約2億9,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。
【X社の概要】
資本金:2,000万円 会社規模:大会社 従業員数:50人 配当:実施していない
売上高:30億円 税引前利益:2億円 純資産:10億円
株主構成(発行済株式総数4万株):Aさん80%、妻Bさん20%
株式の相続税評価額:類似業種比準価額15,000円/株、純資産価額30,000円/株
(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験(資産相談業務)
本試験の概要と傾向
本設例の概要
Aさんは40年前に設立したX社を長年経営してきたが、自身の高齢化を踏まえ、事業承継について具体的な判断を迫られている。長男Cさんは既に専務取締役として研究開発や生産部門を率い、社内外から後継者として認められている。一方で、総合商社に勤務する二男Eさんも営業力やビジネスセンスに優れており、Aさんは兄弟が協力して会社を発展させていくことを望んでいる。しかし、兄弟での事業承継は将来的に経営方針の対立を生む可能性があるとの指摘も受けており、2人にどのような形でX社株式を承継させるべきか判断に迷っている。また、事業承継税制(特例措置)の適用期限も意識する中で、早期に方向性を決める必要があると感じている。
さらに、X社では今期に生産性向上設備の導入を計画しており、設備投資に係る税制優遇(即時償却や税額控除)の適用についても関心を持っている。加えて、資産承継の面では、地方都市で暮らす長女Dさんにも配慮したいと考えており、孫の進学を控えていることから、祖父として学費支援をしてあげたいという思いもある。このように、事業承継と資産承継の双方について、どのように進めていくべきか検討している状況である。
難易度・受験生目線の対策方法
中小企業の事業承継と設備投資に係る税制措置をテーマとした設例です。後継者候補が兄弟である点や、事業承継税制(特例措置)の活用を検討している点など、非上場会社の株式承継に関する典型的な論点に加え、生産性向上設備に係る税制措置といった法人税関連の知識も含まれている点が特徴です。
受験対策としては、まず事業承継分野の基本論点として、非上場株式の承継方法や事業承継税制の概要を整理しておくことが重要です。また、兄弟での経営体制や株式配分の考え方など、後継者の選定に関する実務的な視点についても理解しておくと設例の意図を把握しやすくなります。さらに、生産性向上設備に係る税制措置については、即時償却や税額控除といった制度の基本的な仕組みを押さえておくことで、設備投資と税務の関係を整理しながら読み解くことができる構成といえるでしょう。
本設例の関連テーマ
事業承継税制
遺留分に関する民法の特例
直系尊属から教育資金等の贈与を受けた場合の非課税の特例
ここで、しっかりと基礎知識を付けておくことが重要でしょう。
講義内では、本論点についてしっかり解説しておりますので、ここの知識を定着させていたかどうかが、本試験での回答力となったと言えるでしょう。
FPキャンプ内でも、これらの論点に関してはしっかりと解説しております。
法人の承継対策④ 法人版事業承継税制
法人の承継対策⑦ 遺留分に関する民法の特例
相続税対策④ 生前贈与の活用-2 各種直系尊属の非課税制度
「FPキャンプ1級実技試験コース」を受講されている方は、上記の観点テーマからしっかり学んでおきましょう。
得点のカギとなる論点
設例読みの段階で、想定される質問として考えておくべき論点は以下のポイントです。
・息子二人への事業承継をどのように進めたらいいか
・設備投資に係る税制優遇(即時償却や税額控除)の適用について
・孫への学費の支援について
またこれらに加えて、Part1特有の王道質問への回答も考えておく必要があります。
1級実技試験の王道質問と、それに対する備え方、考え方については、こちらの記事をご覧ください。
partⅠ対策:何を質問すべきかが見えてくる-ポイントABCの思考法
各質問事項と検討のポイント
それでは各質問事項に対する提案のポイントと、知っておくべき知識について解説していきます。
なお実際の試験で問われた細かな論点や質問事項などは、この後の「面接試験の想定応答集」で紹介しておりますので、本章では省略します。
論点1 息子二人への事業承継をどのように進めたらいいか
提案のポイント
・事業承継税制(特例措置)の活用を提案
解説
今回のケースでは、事業承継に伴う相続税・贈与税の負担が大きいため、まずは事業承継税制(特例措置)の活用を検討します。
二男Eさんは現在総合商社に勤務しており、まだX社の役員ではありません。そのため、事業承継税制を利用するためには、まずX社へ入り役員へ就任する必要があります。また、兄弟承継では株式の割合も論点になります。50%ずつ均等に保有させる方法では実務上意思決定がまとまらず、将来的な経営対立につながるリスクがあります。経営の安定化という観点からは「どちらか1人を経営トップと決め、その人物へ議決権を集中させる」という考え方が重要です。
論点2 設備投資に係る税制優遇(即時償却や税額控除)の適用と株価対策
提案のポイント
・即時償却の活用
・株価対策
・役員退職金の検討
解説
X社は今期、5,000万円の生産性向上設備の導入を計画しており、税制優遇措置(即時償却または税額控除)の適用が可能です。
即時償却と税額控除の比較
一般的には、法人税額そのものを減らせる「税額控除」が有利とされることが多いですが、本設例のように、事業承継を考えているケースでは「即時償却」が有効と考えられます。通常の減価償却では耐用年数に応じて数年かけて費用化しますが、即時償却では取得年度に一括で費用計上が可能です。そのため、当期利益を大きく圧縮することができます。
株価対策
X社は従業員数50人、売上高30億円の「大会社」に該当するため、その株式は原則として「類似業種比準方式」で評価されます。
5,000万円を即時償却することで、その期の利益を大幅に圧縮し、同時に純資産も減少させることができます。比準要素が小さくなることで結果的に自社株の評価額が下がり、事業承継税制を活用する場合でも、将来の納税額の負担を低減させた状態で承継を進めることが可能になります。
役員退職金の検討
設備投資以外の手法として、Aさんへの役員退職金の支払いも有効です。多額の退職金を支払うことで、即時償却と同様に利益と純資産を大きく圧縮でき、株価を引き下げることができます。
今回のケースでは、事業承継税制の活用を軸に、即時償却や役員退職金を組み合わせることで、「いかに自社株評価を下げて円滑に承継するか」という視点がポイントとなります。
論点3 孫への学費の支援について
提案のポイント
・教育資金の一括贈与の非課税制度の活用
・相続時精算課税制度の活用
解説
サトシ講師皆様がこの記事を読んでいるころには適用期限は到来していますが、2026年2月に実施された試験であるため、適用期限の2026年3月末が迫っていることを踏まえた想定解答となります。
論点4 円滑な遺産分割について
提案のポイント
・遺留分を考慮した遺言書の作成
・遺留分に関する民法の特例の活用
・代償分割の検討と準備
解説
遺留分を考慮した遺言書の作成
Aさんの総資産は9億円にのぼりますが、その半分以上をX社株式(4.8億円)が占めており、長女Dさんへの遺産配分など、円滑な遺産分割が大きな課題となります。
長女Dさんの遺留分は、7,500万円(9億円×12分の1)となります。事業承継のために長男や二男に株式を集中させた結果、Dさんの不足分が遺留分を下回ると、Dさんから遺留分侵害額請求を受けるリスクがあるため、遺留分を考慮した遺言書を作成することが重要です。また、経営者が経営に集中できるよう、遺留分に関する民法の特例を活用し、以下の合意をすることが可能です。
今回のケースでは、株式評価額が高いため、除外合意の利用が適切です。
また、特例を利用するためには、以下の手順で手続きを行います。
実際の面接試験の想定応答集
それでは、上記の質問事項と知識の整理を踏まえたうえで、実際に試験会場で面接官から行われた質問を再現した、想定応答集をご覧ください。
想定応答集の注意点
- 本想定応答集は、金財実施のFP1級実技試験を実際に受験した「FPキャンプ1級実技コース」受講生のアンケ―トに基づき、FPキャンプ講師陣が実際の面接試験のやりとりを再現したものです。
- 「FPキャンプ1級実技コース」は、1級実技試験受験生の23.8%が利用し、利用者数は各試験ごとに180名以上となっています。本想定応答集では、大量のアンケートデータを集計し、試験機関が想定されていると思われる王道の質問の流れをご紹介しています。
- 記事の都合上、本想定応答集は、実際に行われた質問を一言一句再現したものではありません。面接官や本番試験の解答の流れによって、異なる質問が行われているケースもございます。
- 本想定応答集の回答は、FPキャンプ講師陣が考える模範解答を掲載しております。試験機関側が模範解答としたものではありません。また、この通りに回答しなければならない得点が得られないというものでもありません。
設例の顧客の相談内容および問題点
(受検生)と申します。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんの相談内容と問題点について項目だけで構いませんので全てあげてください。
以降の内容につきましては、FPキャンプ1級きんざい実技コースをご利用の方のみご覧いただけます。
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