【FP解説】遺言書の種類・書き方を分かりやすく解説!円満相続への近道

この記事を書いた人
本多遼太朗

24歳で独学により1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。2021年に「ほんださん / 東大式FPチャンネル」を開設し、32万人以上の登録者を獲得。

2023年に株式会社スクエアワークスを設立し、代表取締役としてサブスク型オンラインFP講座「FPキャンプ」を開始。FPキャンプはFP業界で高い評価を受け、2025年9月のFP1級試験では48%を超える受験生が利用。金融教育の普及に注力し、社会保険労務士や宅地建物取引士など多数の資格試験に合格している。

相続は、理想の最期を自分で実現させるための大切な手段です。

しかし、準備不足が原因で家族間に亀裂が入る「争族」に発展するケースは少なくありません。

「うちは財産が少ないから大丈夫」と考える人は多いですが、実は遺産分割で揉めるケースの多くは、資産額が少ない家庭で発生しています。

残された家族が円満に過ごすために最も有効な手段が「遺言書」です。

遺言書があれば、自分(被相続人)の気持ちを、法的な効力を持って伝えられます。

本記事では、FPの視点から、遺言書の種類や正しい書き方、円満相続のための対策を分かりやすく解説します。

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目次

遺言書の種類は3つ!一般的に使われるのは2つだけ

遺言書には民法で定められた厳格なルールがあり、一般的に使われているものには「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。

①自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者自身が全文を自筆して作成する遺言書です。

紙とペン、ハンコさえあればいつでも作成でき、費用もかからない点がメリットです。

しかし、手軽である反面、内容が無効になるリスクが高い方式でもあります。

遺言書の書き方を守らなければ、遺言書としての効力を持ちません。

また、作成した遺言書は自身で管理する必要があるため、紛失や発見されないリスク、改ざんなどの恐れもあります。

②公正証書遺言

公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言書です。

証人2人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の内容を公証人に口頭で伝え、公証人がそれを文章にまとめます。

法律の専門家である公証人が作成するため、形式不備で無効になるリスクはほぼありません

原本は公証役場で厳重に保管されるため、改ざんの心配がなく、紛失しても再発行してもらえます。

また、遺言者が病気などで文字が書けない場合でも作成でき、自筆証書遺言を諦めていた人でも安心です。

病気などの事情で公証役場に行けない場合でも、自宅や病院まで出張してもらえます。

費用がかかる面ではデメリットですが、確実性が高い遺言書を残せ、遺言者本人の負担も軽くなる面はメリットでしょう。

③秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言の内容を誰にも知られずに、「遺言書が存在すること」を公証役場で証明してもらう方式です。

多くの人が自筆証書遺言か公正証書遺言を選ぶため、一般的にあまり使われていません

本文はパソコンでの作成や代筆も認められていますが、専門家のチェックは受けられず、無効になるリスクがあります。

【比較】自筆証書遺言と公正証書遺言、どっちがおすすめ?

「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」で迷う人のために、それぞれのメリットとデメリットを比較し、判断基準を解説します。

①自筆証書遺言:費用は低いがリスクは高い

自筆証書遺言のメリットは、「費用がかからない」点です。

思い立ったときに自宅ですぐに書けるため、いつでも内容の変更ができます。

気持ちの変化に合わせて何度も書き直したい人や、若い世代で「とりあえず意思表示をしておきたい」と考えている人に適しています。

一方、デメリットは「無効になるリスク」と「死後の手続きの面倒さ」です。

遺言書に関する知識のない人が作成する場合、書かれた内容が無効になるリスクがついて回ります。

さらに、相続開始後に家庭裁判所で「検認」という手続きを受けなければなりません

検認とは、遺言書を見つけた場合、家庭裁判所で遺言書の内容を確認する作業を指します。

遺言書が見つかった点と内容を相続人に通知しなければならず、遺言者の出生時から死亡時までの戸籍謄本を集めなければなりません。

さらに、相続人の戸籍謄本が必要となり、書類の準備も手間取り、検認を実施するまでに1か月程度かかることもあります。

②公正証書遺言:費用がかかるが確実性は高い

公正証書遺言のメリットは「確実性」と「スムーズさ」が挙げられます。

プロが作成するため無効になることは少なく、相続開始後の検認手続きも不要なため、家族の負担を大幅に軽減できます

デメリットは、作成時の手間と費用です。

遺産額や人数に応じて数万円から十数万円の公証人手数料が発生し、最低でも5万円程度の費用はかかります。

また、公証人が2人必要な点など、手続きが面倒な点はデメリットだといえます。

判断基準は「自分」か「家族」どちらの負担を軽減させるか

どちらを選ぶべきか悩んだ場合、自分か家族の負担どちらを軽減させるかで考えてみるとよいでしょう。

自筆証書遺言は、現在の自分にとっては手軽かつ費用が抑えられるメリットがあります。

しかし、死後に家族が検認手続きなどで苦労する可能性があり、書き間違いによる無効のリスクが否定できません。

対して公正証書遺言は、今の自分には費用と手間の負担がかかりますが、死後の家族はスムーズに手続きを進められます

遺言書を書いておくべき人の特徴

遺言書を書いておくと安心できるケースを紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

  • 法定相続人以外に資産を渡したい
  • 相続人同士が不仲
  • 音信不通の相続人がいる
  • 意思表示ができない相続人がいる(認知症の配偶者・障害のある子どもなど)
  • 子どもがおらず兄弟姉妹と疎遠

上記の特徴に当てはまる人は、遺言書を自分の気持ちを表す方法として考えてみましょう

【重要】自筆証書遺言の書き方と4つのルール

自筆証書遺言は法律で定められたルールを厳守しなければ無効になるため、以下のポイントを押さえましょう。

絶対に外せない4つのルール(日付・署名・押印・自書)

自筆証書遺言を有効にするためには、定められた以下の4つの要件をすべて満たす必要があります

  1. すべて自筆する
  2. 署名する
  3. ハンコを押す
  4. 日付を書く

1つ目は「すべて自筆する」です。

遺言の本文は、すべて自分の手で書かなければならず、パソコンやワープロ、代筆は一切認められません。

高齢で手が震えて字が書けない場合は、公正証書遺言を選ぶのがおすすめです。

2つ目は「署名する」です。

誰が書いたものかを証明するために、遺言者自身の氏名を自筆する必要があります。

3つ目は「ハンコを押す」です。

認印でも可能ですが、遺言者自身が遺言書を作成したと証明できるよう、実印を選ぶ方が安心でしょう。

4つ目は「日付を書く」です。

いつ作成された遺言書かを特定するために、年月日の記載が必須です。

「令和〇年〇月吉日」などの曖昧な書き方は認められず、「令和7年12月15日」のように、特定できる日付を記入してください。

遺言書が複数出てきた場合は、日付が新しいものが有効となるため、日付は非常に大切です。

これら4つは必ず書かなければならないため、忘れないようにしっかりと確認しましょう。

また、修正する場合にも厳格なルールがあるため、書き損じた場合は、新しい紙に最初から書き直すのが確実です。

財産目録はパソコンでもOK

遺産の内訳を記した「財産目録」については、パソコンでの作成や通帳のコピー、不動産の登記事項証明書の添付などでも可能です。

財産目録とは、「どの銀行のどの口座にいくらあるか」「どの土地や建物か」などをまとめるためのリストを指します。

各ページ(裏面がある場合は両面)に署名とハンコが必要なため、忘れないように気を付けてください。

ただし、遺言書と財産目録は別々に用意しなければならないため、財産目録に遺言内容を自筆しないようにしましょう。

検認不要!「自筆証書遺言書保管制度」でデメリットを解消

自筆証書遺言のデメリットを解消する「自筆証書遺言書保管制度」を利用するのもおすすめです。

メリットは「検認が不要」になること

自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、相続開始後の家庭裁判所での「検認」が不要です。

先ほど解説した通り、自筆証書遺言は開封前に検認が必要で、そのために戸籍収集などの手間と数か月の時間がかかります。

しかし、法務局に預けた遺言書であれば、相続人はすぐに銀行手続きや不動産登記などの相続手続きを開始できます

公正証書遺言と同じくらいのスピード感で手続きが進められ、手間が軽減するのは嬉しいメリットです。

専門家のチェックがあるから無効になりにくい

保管を申請する際に、法務局の担当者(遺言書保管官)が遺言書のチェックをしてくれるため、無効になるリスクを減らせます

ただし、「中身が法的に有効か」まではチェックされない点には注意してください。

原本は法務局で厳重に保管されるため、紛失や悪意ある相続人による破棄などの心配もありません。

手数料も1通3,900円(収入印紙)と、公正証書遺言に比べて負担が低い特徴があります。

「費用を抑えつつ、安全性も確保したい」という人にとって、自筆証書遺言書保管制度は最適な選択肢といえるでしょう。

円満相続するにはどう対策すべき?3つのポイント

円満相続を実現するために、遺言書作成と並行して進めるべき3つの対策を紹介します。

①元気なうちに家族会議をする

相続対策は、親が元気なうちに家族全員で話し合うことが重要です。

親が倒れて判断能力が低下してからでは、法的な対策はできなくなります

認知症になってしまえば、遺言書の作成だけでなく、不動産の売却が難しくなり、預金口座も凍結されるなどのリスクがあります。

家族のためにも、お盆や正月など家族が集まるタイミングを利用して、今後の生活や財産の管理について話し合うのがおすすめです。

②プラスとマイナスの財産をまとめる

相続財産には、預貯金や不動産といった「プラスの財産」だけでなく、借金や未払いの税金などの「マイナスの財産」も含まれます

相続人は、これらすべてを引き継ぐため、どのような資産があるのかまとめておきましょう。

プラスの財産だけと思っていたら、後から多額の借金が見つかり、相続放棄の期限を過ぎていて大変なことになった事例もあります。

自身の財産の全容を把握し、一覧表(財産目録)にしておけば、最期を迎えたときに家族もスムーズに引き継げます。

全体像が見えてはじめて、誰にどの程度分けたいか具体的に考えるきっかけにもなるため、少しずつ整理しましょう。

③相続内容を全員が把握しておく

遺言書の内容を伝えられるのであれば、生前に相続人全員に伝えておくのが理想です。

遺言の内容を秘密にする権利は遺言者にありますが、死後に突然「長男にすべてを譲る」という遺言書が出てきたらどうなるでしょうか。

他の兄弟姉妹は納得できず、長男との間に修復不可能な溝ができるかもしれません。

「なぜその配分にしたのか」という理由を生前に説明し、納得を得ておくことが円満相続への近道です。

生前に伝えるのが難しい場合は、遺言書の中に「付言事項(ふげんじこう)」を記載しましょう。

付言事項とは、家族へのメッセージを残せる部分(公的効力なし)を指します。

「長男は長年介護をしてくれたから多めに渡したい」と気持ちを書いておけば、相続人の不満を和らげられるでしょう。

円満相続にはお金の知識が重要!FP資格がおすすめ

円満相続をするためには、相続の知識だけでなく、お金の全体像を理解する必要があります。

例えば、遺産分割の方法、相続税の計算、不動産の評価、生命保険の活用など、相続対策には幅広い金融知識が必要です。

これらの知識がないまま進めると、思わぬ税金がかかったり、活用できる控除を見逃したりして損をする可能性があるでしょう。

お金の知識を学びたい人こそ、「FP(ファイナンシャル・プランナー)資格」の勉強がおすすめです。

相続だけでなく、ライフプランニングや資産運用など、自身の人生を経済的側面から豊かにするための知識を学べます。

専門家に任せきりにするのではなく、自分自身で判断できる知識を持ち、大切な家族と資産を守りましょう。

人生を豊かにする知識は「FPキャンプ」で学ぼう

FP資格の学習や、実践的なお金の知識を身につけたいなら、「FPキャンプ」が最適です。

FPキャンプとは、YouTubeで人気の「ほんださん」が運営する、FP試験対策に特化した学習コンテンツを指します。

相続分野は、複雑な法律用語や税率が並ぶため、独学では挫折しやすい分野です。

しかし、FPキャンプの講義は「暗記」ではなく、知識の本質を理解する学習を重視しています。

「なぜこう決まっているのか」「なぜこの税制が存在するのか」などの背景から解説してくれるため、知識が頭に定着します。

他にも、実生活で役立つ応用力や思考力を養えるため、資産運用などを通じてより豊かな生活を手に入れたい人にもおすすめです。

スマホがあればいつでもどこでも視聴できるため、忙しい社会人や主婦でもスキマ時間を活用して効率的に学習を進められます。

資格取得にとどまらず、一生使えるお金の教養を身につけたい人は、ぜひFPキャンプを活用してください。

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理想の最期は叶えられる!知識で実現させよう

遺言書は、単なる財産分けの指示書ではありません。

家族に送る最後の手紙であり、残された家族が争うことなく幸せに暮らすための道しるべです。

「うちは大丈夫」という自信を捨て、正しい知識を持って準備をはじめることが、円満相続への第一歩です。

自筆証書遺言と公正証書遺言の違いを理解して、自分に合った方法を選びましょう。

そして、FPの知識を活用して資産状況を整理し、家族と想いを共有してください。

正しい準備があれば、相続で争うのではなく、家族の絆を再確認する機会に変えられます。

自身の最期と大切な家族のために、今できることからはじめてみませんか。

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