医療費控除はいくらから?お得に還付を受ける計算方法とFP知識

この記事を書いた人
本多遼太朗

24歳で独学により1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。2021年に「ほんださん / 東大式FPチャンネル」を開設し、32万人以上の登録者を獲得。

2023年に株式会社スクエアワークスを設立し、代表取締役としてサブスク型オンラインFP講座「FPキャンプ」を開始。FPキャンプはFP業界で高い評価を受け、2025年9月のFP1級試験では48%を超える受験生が利用。金融教育の普及に注力し、社会保険労務士や宅地建物取引士など多数の資格試験に合格している。

医療費控除は「年間10万円を超えないと意味がない」と諦めている人も多いでしょう。

しかし、年収や家族構成によっては、10万円未満でも還付を受けられる可能性があります。

自身の状況に合わせた計算方法を知らなければ、本来戻ってくるはずのお金を捨ててしまうことになりかねません。

本記事では、医療費控除の基準や対象範囲、家計を守るために不可欠なFP知識について解説します。

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目次

医療費控除はいくらから?基準と計算方法

自身の所得や世帯の状況によっては、ボーダーラインが下がり、控除を受けやすくなるケースが存在します。

医療費が年間10万円超で対象

1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合、超過分が所得控除の対象となります。

参照:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」(2025年11月調査)

計算の対象となるのは、実際に「支払った」金額です。

未払いの医療費は、その年に治療を受けたものであっても対象には含まれません。

参照:国税庁「未払の医療費」(2025年11月調査)

【サンプル】

  • 2025年12月:5万円分の治療を受ける
  • 2026年1月:医療費を5万円支払う

→この場合、医療費は翌年分に該当します。

このように、「いつ治療したか」ではなく「いつ支払ったか」が基準になると覚えておきましょう。

還付される金額は、支払った医療費そのものが戻ってくるわけではありません。

医療費控除の対象となる金額を求める計算式は、以下の通りです。

( 支払った医療費 – 保険金などで補填される金額 ) – 10万円

還付される金額は、上記で求めた医療費控除の対象となる金額に所得税率をかければ、算出できます。

所得税率は、以下の通りです。

課税される所得金額税率
1,000円から194万9,000円まで5%
195万円から329万9,000円まで10%
330万円から694万9,000円まで20%
695万円から899万9,000円まで23%
900万円から1,799万9,000円まで33%
1,800万円から3,999万9,000円まで40%
4,000万円以上45%
参照:国税庁「No.2260 所得税の税率」(2025年11月調査)

例えば、年収350万円・医療費控除の対象となる金額が20万円の人が医療費控除を利用する場合、計算は以下の通りです。

20万円 × 20% = 還付金4万円

さらに、住民税の課税所得も減額されるため、翌年の住民税が安くなるというメリットもあります。

所得税の還付だけでなく、住民税の軽減効果も含めてトータルで考えましょう。

年収によっては10万円未満でも可能

医療費が10万円もかかっていない場合でも、対象になるケースがあります。

総所得金額等が200万円未満の人は、医療費控除のラインが「総所得金額等の5%」に引き下げられます

このルールは見落とされやすい傾向にありますが、所得が低い人ほど恩恵を受けやすい大切な仕組みです。

例えば、パート勤務などで年収が200万円以下の場合を考えてみましょう。

給与収入から給与所得控除を差し引いた後の金額(総所得金額等)が150万円だった場合、5%にあたる「7万5,000円」が判断基準です。

このケースでは、年間の医療費が8万円であれば、通常基準の10万円には届きません。

しかし、5%ルールの7万5,000円を超えているため、医療費控除を受けられます。

「200万円未満の特例」は、リタイア後のシニア世代や、主婦・主夫、就職したばかりで年収が高くない若年層にとって強い味方です。

自身の源泉徴収票を確認し、所得金額に応じた正しい基準値を把握して、諦めていた還付金を受け取りましょう。

家族分も合算OK!世帯全体で計算する

医療費控除は、申告する本人だけの医療費に限られるものではなく、「生計を一にする家族」の医療費を合算して申告できます。

同居していない家族でも、仕送りをして生活費を負担している別居の大学生や、郷里の親なども含まれる場合があります。

家族全員分の医療費をまとめれば、控除の基準額である10万円(所得の5%)を超えやすくなるでしょう。

例えば、夫の医療費が5万円、妻が3万円、子供が3万円だった場合、合算すれば11万円となり、控除の対象となります。

さらに、日本の所得税は「超過累進税率」を採用しており、所得が高い人ほど税率が高くなります。

そのため、所得の高い(税率が高い)方が家族全員分をまとめて申告すれば、還付される税金が多くなりお得です。

単に合算するだけでなく、税率を考慮して申告者を決める視点を持つことで、制度の効果を有効活用できるでしょう。

控除の上限はいくらまで?

医療費を控除できる金額は、最高で200万円までです。

非常に高額な手術や長期入院などで、年間の自己負担額が数百万円にのぼるようなケースで影響します。

ただし、高額療養費制度などを利用すれば、実際の自己負担額は一定の上限に抑えられることが一般的です。

そのため、実務上でこの200万円の上限に達するケースは限定的です。

制度の全体像として、「下限」と「上限」の両方を把握して、より制度を活用しましょう。

1万2,000円超で使える「セルフメディケーション税制」

健康に気を使っている人は、そもそも病院へいく回数が少ない人も多いでしょう。

医療費控除の基準(10万円や所得の5%)に届かない場合でも、「セルフメディケーション税制」を利用できます。

ドラッグストアなどで購入した対象の医薬品(スイッチOTC医薬品)の購入額が、年間で1万2,000円を超えている人が対象です。

対象となる医薬品には、「セルフメディケーション 税 控除対象」と書かれたマークがパッケージに入っています。

風邪薬や頭痛薬、湿布薬など、日常的に使う薬の多くが対象となるため、覚えておくとよいでしょう。

ただし、申告する人が「定期健康診断」や「予防接種」などを受けており、健康管理をしていることが条件です。

また、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制は「併用」できません。

どちらか一方しか選べないため、両方の計算をして、還付額が多くなるほうを選択して申告する必要があります。

「病院にはあまり行かないけれど、市販薬はよく買う」という人は、セルフメディケーション税制を検討してみましょう。

薬代や出産費用は?対象になる金額と自己負担の考え方

医療費控除の申告で対象となる費用の範囲と、計算時に差し引くべき「金額」の考え方について解説します。

対象になるもの

医療費控除の対象となる費用の原則は、「治療を目的としたものであるか」という点です。

医師による診療や治療にかかった費用や、医師の処方箋で購入した医薬品代は対象となります。

また、薬局やドラッグストアで購入した市販薬(風邪薬や頭痛薬)など、治療のために使用したものであれば対象です。

参照:国税庁「かぜ薬の購入費用」(2025年11月調査)

そのほか、通院のために利用した公共交通機関(電車やバス)の運賃も認められます。

小さい子供の通院などで親が付き添う場合の交通費も対象となるため、日時や金額、経路をメモとして残しておきましょう。

出産に関連する費用も医療費控除に一部該当するので、申告するのがおすすめです。

妊娠中の定期検診費用や分娩費用、入院費用などは医療費控除に含まれます。

不妊治療にかかった費用や、視力回復のためのレーシック手術費用、インプラント治療(美容目的は不可)も対象です。

このように、病気やケガの治療だけでなく、さまざまな医療費もカバーされています。

対象にならないもの

一方で、予防や健康増進、美容を目的とした費用は対象外となります。

例えば、インフルエンザなどの予防接種費用や、人間ドック、健康診断の費用は、原則として対象外です。

ただし、健康診断の結果、重大な病気が発見されて引き続き治療を受けた場合に限り、健康診断の費用も対象となる特例があります。

美容目的の整形手術や、肌荒れ改善のためのエステ費用、単なる疲労回復のためのビタミン剤やサプリメントの購入費用も認められません。

また、通院にかかる費用であっても、自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車場代は対象外となるため、注意が必要です。

入院時に個室を希望した場合にかかる差額ベッド代も、医師が必要と認めた場合を除き、自己都合によるものは対象外となります。

また、入院中に購入したパジャマや身の回り品の費用は、医療費控除には含められません。

すべてのものが申告できるわけではないため、費用の目的を冷静に判断して、制度を有効活用しましょう。

窓口負担から差し引く金額

医療費控除の計算をするとき、支払った総額から必ず差し引かなければならないのが「保険金などで補填される金額」です。

補填される金額を引き忘れて申告すると、後から修正が必要になる場合や、税務署から指摘を受ける可能性があります。

例えば、「高額療養費」や「出産育児一時金」、「家族療養費」などが該当します。

また、民間の生命保険や医療保険から支払われる「入院給付金」や「手術給付金」も、補填される金額として差し引きましょう。

例えば、入院をして30万円を支払い、後日、10万円の給付金を受け取った場合、医療費控除の対象となるのは20万円です。

補填金額が支払った医療費を上回る場合、医療費控除の対象となる金額はゼロとなります。

給付金の明細書は捨てずに保管して、正確な自己負担額を計算しましょう。

だれでも確定申告は必須!医療費控除の申告手順

医療費控除を受けるために申告が必要な理由と手続きの流れ、書類の作成方法について解説します。

会社員でも確定申告が必要

一般的な会社員の場合、生命保険料控除や地震保険料控除などは、年末調整によって会社が計算し、手続きを代行してくれます。

しかし、医療費控除は年末調整では申告できません。

そのため、会社員であっても、還付を受けるためには自分自身で住所地を管轄する税務署に「確定申告」をする必要があります

確定申告の期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです。

ただし、還付を受けるためだけの「還付申告」であれば、翌年の1月1日から申告ができ、5年間は遡って申告できます。

「過去に高い医療費を払ったけれど申告し忘れていた」という場合でも、領収書や記録が残っていれば、今からでも取り戻せる可能性があります。

会社員にとって確定申告は馴染みが薄く、ハードルが高く感じるかもしれません。

しかし、医療費控除の申告だけであれば、手続きはそれほど複雑ではなく、スマホやパソコンを利用して自宅から申告できます。

領収書は提出不要、「明細書」を作成する

医療費控除は、領収書の提出は不要となり、「医療費控除の明細書」を作成し、提出する必要があります

「医療費控除の明細書」には、以下の内容を記入します。

  • 医療を受けた人の氏名
  • 支払先(病院や薬局の名前)
  • 医療費の区分
  • 支払った金額
  • 補填される金額(高額療養費制度・入院給付金など)

参照:国税庁「医療費控除の明細書」(2025年11月調査)

また、健康保険組合から送られてくる「医療費のお知らせ(医療費通知)」は、添付書類として利用でき、記入内容を簡略化できます。

参照:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」(2025年11月調査)

領収書の提出は不要になりましたが、捨ててよいわけではありません。

税務署から記載内容の確認を求められた場合、提示や提出ができるよう、確定申告期限から5年間は保存しておく義務があります。

そのため、年間の医療費に関する領収書は、家族分も含めて保管しておく習慣をつけるのがよいでしょう。

また、国税庁の「e-Tax」を利用すれば、画面の案内に沿って入力するだけで明細書や申告書が自動作成され、計算ミスの防止にもつながります。

複雑な税制で損しないために必要な「FPの知識」

医療費控除の仕組みを見て、「意外と細かいルールが多い」「知らなければ損をしていたかもしれない」と感じたのではないでしょうか。

例えば、「年収200万円未満の5%ルール」や「家族の中で所得が高い人が申告すべき」という知識は、学校や職場では学べない知識です。

日本には、知っている人が得をする制度が多くあるため、条件を満たしていても、自分から申請しなければ意味がありません。

医療費控除に限らず、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)など、国民が恩恵を受けられる制度は存在します。

これらの制度は複雑に絡み合っており、根本的な理解がないと誤った判断をするリスクがあるでしょう。

そのため、お金の知識を体系的に学べる「FP(ファイナンシャルプランナー)」の勉強がおすすめです。

FPの学習を通じて、税金、保険、不動産、年金、相続などの6分野を横断的に理解できます。

FPの学習を通じて、周りの意見に流されず、自身の条件に合う最適解を導き出せるようになるでしょう。

単なる資格取得のためだけでなく、自分と家族の資産を守り、かしこく生きるための武器になるのがFP学習です。

無料ではじめる!お金の不安をなくすなら「FPキャンプ」

「独学では難しそう」「何からはじめればいいか分からない」と悩む人におすすめなのが、ほんださんが運営する「FPキャンプ」です。

魅力①:無料プランあり!無期限でじっくり学べる

FPキャンプには、これから学習をはじめる人に最適な無料プラン(FP3級 学科試験対策)が用意されています

多くのお試しプランでは、無料体験期間が短く設定されていたり、見られるコンテンツが制限されていたりするのが一般的です。

しかし、FPキャンプの無料プランには期限がなく、忙しい社会人や主婦(主夫)でも、FP学習やFPキャンプとの相性をじっくり確かめられます。

「なぜそうなるのか」という制度の背景や理由を丁寧に解説してくれるため、初心者でも理解しやすく、納得しながら学習を進められます。

経済的なリスクなく、自分のペースで学習をスタートできる環境で新しい一歩を踏み出してみてください。

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魅力②:節約のレベルが変わる!一生役立つ知識が身につく

FPキャンプで学ぶメリットは、試験合格のテクニックだけでなく、実生活ですぐに役立つ知識が手に入る点です。

具体的なエピソードを交えて解説するため、「この知識は自分の家計ならこう使える」というイメージが湧きやすくなります。

例えば、今回解説した医療費控除のような税金の仕組みだけでなく、以下の知識も得られます。

  • 民間の保険に入りすぎないための公的保険の知識
  • 老後資金を効率よく作るための資産運用の考え方
  • 人生の三大資金(教育・住宅・老後)に直結するノウハウ など

結果として、無駄な保険料を削減したり、税金の還付を受けたりすることで、大きなメリットを家計にもたらすでしょう。

「家計を強くしたい」「将来のお金の不安をなくしたい」と願う人にとって、FPキャンプでの学習は、人生を変えるきっかけになります。

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医療費控除を有効活用!知識でお金を守ろう

医療費控除は、自分から申告することで税金が戻ってくる、家計にとってありがたい制度です。

「10万円」という基準だけでなく、所得に応じた「5%ルール」や「家族合算」のテクニックを駆使することで、還付のチャンスは広がります。

しかし、このような情報は、学校や職場では手に入りません。

日本の複雑な制度の中で損をせず、かしこく資産を形成していくためには、正しい金融知識が必要です。

医療費控除の申告をきっかけに、お金の仕組みに興味を持ち、FPの学習をはじめてみてはいかがでしょうか。

幅広く学んだお金の知識は、一生涯にわたってあなたと家族を守る心強い盾となります。

まずは身近な制度の活用からはじめ、徐々に守備範囲を広げていきましょう。

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