2025年9月27日 Part Ⅰ FP1級 実技試験過去問解説&本試験質問・解答例

目次

本記事の構成

本記事は以下の内容で構成されています。

・実際の設例
・本試験の概要と傾向
・得点のカギとなる論点
・各質問事項と検討のポイント
・実際の面接試験の想定応答集

実際の設例

それではまず、今回の設例を読んでいきましょう。

●設例●
 Aさん(71歳)は、食料品製造業を営むX株式会社(非上場企業)の創業社長である。X社は、Aさんが40年前に設立して以来、ロングセラー商品を中心に業容を拡大させてきた。
しかし、近年はヒット商品に恵まれず、売上が減少し、前期は創業以来初めて赤字に転落した。今期も業績が厳しく、2期連続での赤字決算となる見込みである。過去の内部留保が多く、また赤字額が少ないため、今のところ経営に対する影響は出ていない。

【事業承継について】
 Aさんは、新たに開発した商品の発売を機に社長職を辞し、X社を去る決意をした。今後は、希望退職者を募り、人員の削減を図るなど会社の体質を強化したうえで、専務取締役の長男Cさん(44歳)に事業を承継し、長男Cさんを含む若手社員にX社を託すつもりである。
大手食品メーカーでの勤務を経てX社に入社した長男Cさんは、10年前に専務取締役に就任し、Aさんを補佐してきた。取引先・従業員からの信頼は厚く、後継者としての資質に問題はない。
 X社株式の承継方法について、Aさんは贈与による移転を検討しているが、現時点では明確な考えはなく、長男Cさんと相談して実行する予定である。
 Aさんは、今期も赤字が見込まれるため、X社が黒字に転ずるまでは、毎年行っていた配当をゼロにしたいと思っているが、長男CさんにX社株式を移転するにあたり、X社株式の評価上、何か問題となることはないか知りたいと思っている。

【資産承継について】
 会社員の二男Dさん(39歳)は、妻と子の3人で都内の賃貸マンションで暮らしている。
二男Dさんは、以前から長男Cさんと折り合いが悪く、Aさんの相続が発生した場合、相当額を相続できなければ納得できないと考えている。
 このままでは、遺産分割において争いが起こり、申告期限までに分割ができないおそれが
あるため、Aさんはどのように資産承継をすればよいか頭を悩ませている。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
 1.現預金          : 1億円(役員退職金は考慮していない)
 2.X社株式         : 2億円
 3.自宅
   ①土地(360㎡)      : 1億5,000万円
   ②建物(二世帯住宅)   : 5,000万円
 4.X社本社土地(400㎡)  : 1億円
 5.X社本社建物       : 5,000万円(年間家賃800万円)
   合計           : 6億5,000万円
※Aさんの相続に係る相続税額は、約1億9,500万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減
 適用前)と見積もられている。

【X社の概要】
資本金:5,000万円  会社規模:大会社  従業員数:120人  配当:毎期25円/株
売上高:21億円    経常利益:▲1,000万円  余剰資金:3億円
株主構成(発行済株式総数10万株):Aさん100%
株式の相続税評価額:類似業種比準価額2,000円/株、純資産価額5,000円/株
※今期の損失金額は約300万円と、赤字幅の縮小が見込まれている。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験(資産相談業務)

本試験の概要と傾向


本設例の概要

創業社長であるAさん(71歳)の事業承継と相続対策を主題とした設例です。

Aさんは、食料品製造業を営むX社の経営から退き、専務取締役である長男Cさんへ社長職を承継する決意を固めています。長男Cさんは、前職の経験を活かしてX社に10年前から参画しており、社内外からの信頼も厚い人物ですが、Aさんは株式の承継方法については明確な方針を決めておらず、贈与による移転を検討中です。

また、今期の業績悪化を受けて配当をゼロにする意向を持っていますが、そのことがX社株式の評価にどのような影響を及ぼすか不安を感じています。

一方、相続に関しては、会社員の二男Dさんと長男Cさんの不仲が深刻であり、相続発生時の遺産分割における対立が懸念されています。特に、株式や本社不動産を含む全体資産が6億円を超える規模であり、推定相続税額も1億9,500万円と高額なため、納税資金の準備や分割方法について慎重な検討が必要です。

難易度・受験生目線の対策方法

創業社長Aさんによる非上場企業の事業承継と、家族間における資産承継のバランス調整をテーマとした設例です。

業績が悪化している中での社長交代を背景に、X社株式の評価や贈与タイミングの選定、配当停止による影響など、実務的な事業承継の観点が問われました。赤字決算による株式評価の変動や、今後の黒字回復を見込んだ場合の評価方法の選択など、知識と判断力が試される内容です。

また、遺言未作成の状態で兄弟間の関係が悪いケースを扱っており、遺産分割が遅延するリスクや、遺留分・代償分割といった対策の検討も求められる構成でした。Cさんへの株式集中とDさんへの公平な遺産配分という資産承継上の調整は、定番かつ頻出の設問形式です。

財産の構成比が高額不動産や自社株に偏っており、納税資金確保の視点からも課題が多く、全体的に中~上級レベルの総合的な判断力が必要とされる設例といえます。

本設例の関連テーマ

中小企業の事業承継
非上場株式の評価と評価減の手法
遺言

ここで、しっかりと基礎知識を付けておくことが重要でしょう。

講義内では、本論点についてしっかり解説しておりますので、ここの知識を定着させていたかどうかが、本試験での回答力となったと言えるでしょう。

FPキャンプ内でも、これらの論点に関してはしっかりと解説しております。
法人の承継対策③ 株式の評価減の手法
法人の承継対策④ 法人版事業承継税制
相続の基礎④ 遺言の活用-1 遺言の種類と留意点
相続の基礎⑤ 遺言の活用-2 実践的な提案例

「FPキャンプ1級実技試験コース」を受講されている方は、上記の観点テーマからしっかり学んでおきましょう。

得点のカギとなる論点

設例読みの段階で、想定される質問として考えておくべき論点は以下のポイントです。

・X社株式の承継方法について相談したい点
・X社の配当をゼロにした場合の問題について知りたいと思っている点
・長男Cさんと二男Dさんへの資産承継に悩んでいる点

またこれらに加えて、Part1特有の王道質問への回答も考えておく必要があります。

1級実技試験の王道質問と、それに対する備え方、考え方については、こちらの記事をご覧ください。
partⅠ対策:何を質問すべきかが見えてくる-ポイントABCの思考法

各質問事項と検討のポイント

それでは各質問事項に対する提案のポイントと、知っておくべき知識について解説していきます。

なお実際の試験で問われた細かな論点や質問事項などは、この後の「面接試験の想定応答集」で紹介しておりますので、本章では省略します。

論点1 X社株式の承継方法について

提案のポイント

・法人版事業承継税制(特例措置)の活用を提案

解説

株式の移転手段としては、売買、贈与、相続(遺贈を含む)による取得などが一般的に考えられます。しかし、これらの方法はいずれも、一定の税負担が発生してしまうという問題があります。特に、非上場会社の株式は評価額が高額になりやすく、事業承継の大きな障壁となりがちです。

そこで検討されるのが、法人版事業承継税制です。本特例は、一定の要件を満たすことで、後継者が贈与または相続により非上場株式等を取得した場合に、贈与税・相続税の納税が猶予され、将来的には免除される可能性がある制度です。

なお、本特例を利用するためには、

  • 特例承継計画を2026年3月31日までに提出すること
  • 株式の承継(贈与または相続)を2027年12月31日までに行うこと
  • 後継者が代表権を有し、経営を継続すること

といった期限管理および要件の満たすことが必要となります。

本件では、

  • X社株式の評価額が約2億円と高額であること
  • 後継者が長男Cさんに明確に定まっていること
  • 事業を継続し、経営権を安定的に承継する必要があること

といった事情を踏まえると、まずは法人版事業承継税制の活用を優先的に検討するという判断が妥当です。

そして、要件や期限の関係で本特例が利用できない場合や顧客の意向に合わない場合などは、相続時精算課税制度など、他の株式承継方法を次の選択肢として検討するという流れとなります。

論点2 配当をゼロにする場合の問題点

提案のポイント

・配当をゼロにすると、株式評価方式が変わり、評価額が上昇する可能性がある

解説

非上場株式の評価に用いられる類似業種比準方式では、

  • 配当金額
  • 利益金額
  • 純資産価額

という3つの比準要素を用いて株式評価を行います。
本件では、X社が

  • 2期連続赤字 → 利益金額がゼロ
  • 配当をゼロにする → 配当金額がゼロ

という状況になるため、3つの比準要素のうち2つがゼロとなります。その結果、X社は「特定の評価会社」に該当し、類似業種比準方式による評価ができなくなります。特定の評価会社となった場合、株式の評価は原則として純資産価額方式によって行われます。

純資産価額方式は、会社の資産・負債を相続税評価額で評価し直す方法であり、内部留保が多い会社ほど株式評価額が高くなりやすいという特徴があります。本件では、X社に多額の内部留保があるため、配当をゼロにすると、かえって株式評価額が上昇する可能性がある点に注意が必要です。

なお、一定の場合には、
Lの割合を0.25とした併用方式
(類似業種比準価額×0.25+純資産価額×0.75)
による評価も可能です。

サトシ講師

サトシ講師のワンポイント
配当をゼロにすると「節税になる」と思いがちですが、
非上場株式では逆に評価額が上がるケースがある点に注意が必要です。
期末に少額でも配当を行うことで比準要素1の会社を回避でき
評価方式の変更を防ぐことが可能です。

論点3 長男Cさんと二男Dさんへの円滑な遺産分割

提案のポイント

・遺留分に配慮した遺言書の作成を提案
・遺言以外の対策として、生命保険の活用や金庫株の活用を検討

解説

本件では、長男Cさんと二男Dさんの関係が良好とはいえず、遺産分割協議がまとまらないおそれがあります。そのため、まず有効な対策として、遺留分に配慮した遺言書を作成することを提案します。

遺言書には、つぎの3種類があります。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

公正証書遺言は、「無効リスクが低い」「紛失・改竄リスクが低い」というメリットがある一方で、財産額が大きいほど作成費用が高額になる点や、証人2名が必要となる点がデメリットです。

本件では、Aさんの所有財産が高額であるため、公正証書遺言の費用が高額になる可能性があります。
そのため、自筆証書遺言の作成を提案するという整理になります。

また、遺言書の作成に加えて、納税資金・代償金の確保という観点から、次の対策も有効です。

① 生命保険の活用
死亡保険金は遺産分割の対象とならず、受取人固有の財産として速やかに受け取ることができます。

本件では、長男CさんがX社株式を承継し、二男Dさんへ代償金を支払う可能性があるため、生命保険金の受取人を長男Cさんとすることも有効です。

② 金庫株の活用
X社が自己株式を取得することで、現金を確保し、代償分割の原資に充てることも考えられます。

③生前贈与の活用
さらに、次男Dさんには子がおり、現在は賃貸住宅に居住しているため、教育資金の一括贈与の特例や、住宅取得等資金の贈与の特例も検討できます。

これらの特例を活用することで、株式承継とは別の形で二男Dさん側に配慮し、円滑な遺産分割につなげることが可能です。

論点4 見込み相続税額が高額

提案のポイント

・小規模宅地の特例を活用

解説

本件では、Aさんの所有財産の合計が約6億5,000万円、見込み相続税額は約1億9,500万円と試算されており、相続税負担が大きい点が重要な問題となっています。

この相続税負担を軽減するための有効な対策として、小規模宅地等の特例の活用が考えられます。

① 自宅土地について(特定居住用宅地等)
Aさんの自宅は二世帯住宅であり、被相続人の居住用として使用されていた土地については、「特定居住用宅地等」として小規模宅地等の特例の適用が検討できます。

本件では、自宅土地の面積は360㎡ですが、特例の適用対象となるのは330㎡までとなります。
そのため、330㎡相当部分について80%の評価減を受けることができます。

② X社本社土地について(特定同族会社事業用宅地等)
X社本社土地(400㎡)については、後継者である長男CさんがX社を承継し、引き続き事業を継続することを前提とすれば、「特定同族会社事業用宅地等」として小規模宅地等の特例の適用が考えられます。

本件の本社土地は400㎡であるため、全体について80%評価減の適用余地があります。

③ 面積調整と併用の考え方
小規模宅地等の特例は、宅地の区分ごとに限度面積が定められており、特定居住用宅地等と特定同族会社事業用宅地等は併用が可能です。

したがって本件では、

  • 自宅土地:特定居住用宅地等(330㎡・80%減)
  • 本社土地:特定同族会社事業用宅地等(400㎡・80%減)

という形で、それぞれの限度内で特例を適用できる可能性があります。

実際の面接試験の想定応答集

それでは、上記の質問事項と知識の整理を踏まえたうえで、実際に試験会場で面接官から行われた質問を再現した、想定応答集をご覧ください。

想定応答集の注意点

  • 本想定応答集は、金財実施のFP1級実技試験を実際に受験した「FPキャンプ1級実技コース」受講生のアンケ―トに基づき、FPキャンプ講師陣が実際の面接試験のやりとりを再現したものです。
  • 「FPキャンプ1級実技コース」は、1級実技試験受験生の23.8%が利用し、利用者数は各試験ごとに180名以上となっています。本想定応答集では、大量のアンケートデータを集計し、試験機関が想定されていると思われる王道の質問の流れをご紹介しています。
  • 記事の都合上、本想定応答集は、実際に行われた質問を一言一句再現したものではありません。面接官や本番試験の解答の流れによって、異なる質問が行われているケースもございます。
  • 本想定応答集の回答は、FPキャンプ講師陣が考える模範解答を掲載しております。試験機関側が模範解答としたものではありません。また、この通りに回答しなければならない得点が得られないというものでもありません。

設例の顧客の相談内容および問題点

(受検生)と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんの相談内容と問題点について項目だけで構いませんので全てあげてください。

以降の内容につきましては、FPキャンプ1級きんざい実技コースをご利用の方のみご覧いただけます。

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